私好みの新刊 20259

『あなたの中のふしぎDNA 中村桂子/文 はたこうしろう/絵 

たくさんのふしぎ4月 福音館書店

  ついにDNAの話が「たくさんのふしぎ」に取り上げられた。

今は細胞の研究は進んでいる。著者は長らく生命誌研究館に館長でおら

れた中村桂子さん、絵ははたこうしろうさん。中村桂子さんは、生き続

けることの大切さをうったえる。「一つの個体が・・子孫に命をつなげ

40億年間とざされることなく続いてきたのです。」(ふしぎ新聞)とも

書いている。

 まず、チョウたち昆虫の話が出る。「人間と昆虫とは仲間だってこと

です!」といきなり書かれている。動物仲間といえば人とも仲間だけど・・

と飛躍した考えに納得。やがて「仲間は動物だけじゃないんです。」と

出てくる。ほかにいるの?と思いたくなる。ここで細胞の話が出る。生物

は細胞が基で生きている。そういえばそうだ。バクテリアは1個の細胞

であるが人間の大人は数十兆も細胞があという。一人の人間はこれだけ

の細胞を操って生きているのかと不思議に思う。さて、次に出てくるの

が細胞内のDNA。まず出るのはあのらせん階段のような図。ここでアデ

ニン(A),チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)4つの塩基の話が出る。

そこからがこの話の核心にせまる。そのDNAのはたらきについて以下に

まとめられる。@は遺伝の話、「あなたが生きている間ずっと両親から

受け継いだDNAが・・。」、Aはタンパク質をつくる働きがDNAにある

という。DNAは筋肉や骨を作る。Bは成長と進化の話、DNAは多様な生き

物が地球上に現れた根拠となっている。ここまで来ると、生き物はみん

な同じ仲間だと納得できる。DNAは「わたしたち生き物の歴史を語るのです」

「自分がそのなかにいるかけがいのない存在」としめくくっている。少

々込み入った文もあるがDNAについてよくわかる絵本となっている。

                     202504月 736円 

『巨石運搬! 海をこえて大阪城へ 』  鎌田歩/作  アリス館

 大阪城に行くと巨石が目につく。江戸時代「こんな大きな石をいったい

どのようにして運んで来たのだろうか」とまず疑問に思う。それを絵本で

細かく力見せてくれるのがこの本である。城をつくったのは、高度な技術

を持った技術者たち、大工や石工たち。

本の最初に出る場面は瀬戸内海に浮かぶ小さな島小豆島である。

「この島はむかしからよい石がとれることでしられていました。」とある

。次に見えるのは、大きな岩の片面、足場を組んだ周りでたくさんの石

工たちが働いている場面。足場を組んだり、ロープをかけたり、石をく

だいたり、道をつくったりと大忙し。ペ―ジを来ると、石の「目」に歌

いながらくさびを打ち込んでいる絵。なにやら楽しそう。次のページでは

、いよいよ「矢穴」ができていく場面、次ページで「バキバキバキ ドドーン!

」ついに大きな石が切り落とされた。迫力ある場面。次は石の形が整えら

れ何重にもなわをかけて「シュラ」と呼ばれる大きなそりに巨石を乗せ引

っ張っていく準備を整える。巨石の上にははやしたてる楽師も乗る。みん

な自信満々だ。

いよいよ、巨大石を載せたそりは動き出す。何十人もの人が掛け声よろし

く引っ張っていく。ころを動かす人もいる。まるでお祭りのような場面。

次は、いよいよ巨石を船に乗せる場面が出る。これまた大変な作業だ。

大きな舟が二つ用意し、一つの船に「ろくろ」を取り付けて巨石をもう一

つの船に引きずり込む。やがて巨石を積んだ舟は、舟乗りたちの舟歌を響

かせながら静かな海の上を進んでいく。「サーヨイサー、サーヨイサー」。

いよいよ、舟は大阪の港に近づいてくる。巨石は下ろされてお城の作られ

ている所まで運ばれていく。お城にはもう石垣がいっぱいできていまる。

そこへこの巨石が。「こりゃたまげた!」周りのみんなは声をあげる。

たくさんの力と知恵が積み重なった巨石は、やっとお城を支えることが出

来た。絵も大胆ですばらしい本。     202412月 1,600

            新刊案内9月